恋するオフィスの禁止事項 ※2021.8.23 番外編up!※
さっきの話と午後の緊張のせいで昼食はあまり喉を通らず、空腹のまま二時を迎えた。ついにプレゼンだ。
課長や部長が会議室へとやってくる前に、見かねた先輩は「飲んどけ」とこっそり野菜ジュースをくれた。
「緊張します、桐谷さん……」
「へえ、緊張してるなんて珍しいな。いつも捨て身タックルだろ、水野は」
「そんなことないですよ、緊張しますよ!でももうやるしかないし、今回も捨て身タックルです……」
「おう。骨は拾ってやるから安心しとけ」
「せんぱい……」
堂々とした先輩に甘えられるのも今のうちだけ。
会議が始まったら、新商品の提案はすべて私に一任されていて、詰まっても桐谷さんが助けてくれることはない。助けない、と事前に言われている。
私は今まで何回も何回も、惚れ惚れするような先輩のプレゼンを隣で聞いてきた。
そのたび、私が意見を言えば必ず先輩が拾い上げてくれたし、まるで良い意見を言ったかのようにフォローしてくれた。
私が先輩の片腕だなんて言われるようになったのは本当は全部先輩のおかげで、私の実力だとは言えない。
でも、今日はその実力だけを見られている。もし、化けの皮が剥がれて、本当は私は先輩のお荷物になっているなんて思われたら……。
浅見さんの話を思い出して、行き場のない不安ばかりが頭を駆け巡っていった。
「水野」
「えっ、はい」
「頑張れよ。俺、水野のこと信じてるからな」
せんぱい……。
そんな嬉しいこと言われても、今は余計にプレッシャーですよ。
そんな私の表情も見透かして、先輩はククク、と笑っている。