そうして僕らはすれ違う【短編】
少しずつ、現実世界から僕が消えていく。



彼女は、少しずつ顔を上げていく。



僕の知らない世界で、僕の知らない彼女が生きていく。



見ていられない、と思った。



目を逸らしたかった。



だから、最後に嘘をついた。



前を向け、と。



本当は、俯いたまま、側にいて欲しかった。



そんな僕の、どうしようもないワガママを押し付けてしまう前に。



現実世界から僕が消えてしまう前に。
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