所長による小動物系女子の捕獲計画
さっきの多和田さんのセリフを真似て意地を張る私の頬を、そっと大きな手が包み込んだ。

「でもほら、溢れた」

親指で目尻を擦られて、耐えきれずに涙が溢れた。

「なんで泣いたか教えて？」

「ーー私だって分からないですよ。でもなんか、多和田さんに拒絶されたみたいに感じて、そしたら悲しくなっちゃって」

一度溢れた涙は止まることを知らないみたいにどんどん溢れてくる。

「俺に拒絶されたら悲しい？」

「悲しいですよ！昨日から近くなって、名前呼んで貰えて、不思議だけど嬉しかったのに」

「名前呼び、嬉しいと思ってくれたんだ」

「多和田さん、なんで笑ってるんですかって‥‥んっ」

私がボロボロ泣いているのに、多和田さんが嬉しそうな顔をしているのが腹が立ったから文句を言ったのに。

嬉しそうに笑ったまま多和田さんの顔が近づいたと思ったらーー。

唇に柔らかな温もりが触れた。
< 64 / 80 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop