女トモダチ
「ハルト……?」

明らかに何かを言いかけたハルトの言葉が気になって仕方がない。

膝の上で拳を握り締めているハルトに心が揺れる。

どうしてそんなに辛そうなの……?

何かあたしに言いたいことがあったんじゃないの……?

「ごめんね、お待たせ。じゃあ行こうか」

「あっ……うん」

ニコニコと笑いながら駆け寄ってきたセイラに微笑んだ時、

「悪い。ちょっと用事思い出したから帰るわ」

隣にいたハルトがスッと立ち上がった。

「あっ、そうなんだ。残念……」

「ごめんな」

もう一度セイラに謝ると、ハルトはそのまま映画館を出て行ってしまった。
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