Memory Puzzle
「うん。ありがとう、雪斗。ご飯、作るね。」
時音は、今起こった事を整理する時間が欲しかった。理解する時間が欲しかった。心配させないように雪斗に笑いかけたつもりだったが、うまく笑えたか分からない。ズキズキとする体に、ムチうって、歯を食いしばって立ち上がる。
「時音!すまなかった。お父さん、何をやってるのか…。ごめん!」
お父さんは、そう言って土下座した。残った右手を床について。時音はその様子を見て、許してあげたいと思った。きっと、片腕を無くし、お母さんを無くした今辛いことがあるのだろうと…。
「いいよ。頭あげて。ね?」
時音は優しく声をかけた。それを聞いたお父さんは、ゆっくりと時音に近づき怪我の手当をしてくれた。
最後の傷にバンドエイドを貼ってもらい、時音はありがとうと言った。そして、すぐに鍋の準備をしていつもと変わらないように食べ始めた。怖いくらいいつもと同じように。

あれは、お父さんの気分がそうだっただけ。

無かった事にしよう。

時音は、そう心に決めいつもと同じようにお父さんに接した。それはただ、時音が受け入れたくなかっただけだとは、時音は気付いてはいなかった。
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