恋をするならきみがいい。
本当は手を繋いで歩きたい。
他愛ないメールをしたり、たまには夜更かしして電話をしたり。お互いの好きな映画を見て、お互いに行きたい場所に行って。
ふたりだけの思い出が増えていく中で、抱き合ってキスをしたり、特別な関係じゃないとできないことを。
――〝大智〟
いつか、下の名前で呼んでみたい。
そんな夢みたいな願望が、ずっとずっと胸の奥にあった。
私は笹原の顔を見ることができずに下を向いたまま。ぽろぽろと涙が流れるのを必死で隠しながらギュッと手に力を入れていた。
今、笹原がどんな顔をしてるのか分からない。
困っているかもしれない。
どうしようか戸惑ってるかもしれない。
だから顔を上げることができない。
「小野寺、こっち向いて」
笹原の優しい声。
「……ムリッ」
「じゃあ、そのままでいいから聞いて」
耳だけはまっすぐに笹原のほうに集中した。
そして私の鼻を啜る音が止まると同時に飛んできた言葉。