恋をするならきみがいい。
――『笹原、好き』
今考えればタイミングは最悪だった。
帰り道にたまたま遭遇して、途中まで一緒に帰ることになって。
私が一方的に下らない話を振りながらも、ちょっといつもより歩幅を小さめに歩いて、笹原との帰り道を長引かせようとしてた時……。
突然、雨が降ってきた。
しかも通り雨じゃなくて、ゴロゴロと雷付きの本降り。
傘なんて持ってなかった私たちは慌てて屋根があるバス停まで走った。
足が遅い私を見かねて笹原が手を引っ張ってくれて……。
次第に濡れていくYシャツと、
しなっていく笹原の黒髪と、
その広い肩幅と、力強い腕。
バシャバシャと水しぶきが跳ねる中で、その後ろ姿を見つめながら、このまま時間が止まればいいのにって。
このままバス停に着かずに笹原の手が私から離れなきゃいいのにって思っていたら、
まるで漫画のように石につまずいて、泥水にそのままダイブ。
それでも気持ちが抑えられなくて、転んで顔を上げた瞬間に出た言葉が〝笹原、好き〟だった。