これを愛と呼ばぬなら
真っ暗だった世界に、まばゆい線が入る。それは少しずつ広がって、私の視界に、見覚えのないアイボリーの天井が広がる。そして、心配そうに私を覗く顔。
「……よかった、目を覚ました」
「新井さん……?」
私を覗き込んでいたのは、新井さんだった。
「どうして、新井さんが?」
「急に動いちゃダメだ」
驚いて体を起こそうとした私を、新井さんが制する。私の背中に手をあて、ゆっくりと起こしてくれた。
「ここは会社の医務室だよ。君は受付の前で倒れたんだ。覚えてる?」
掛け布団の真っ白なカバーを見つめながら、記憶を辿る。久しぶりに営業の高橋さんが受付に来て、いきなり腕を掴まれて驚いた私は、体が竦んで動けなくなった。それを見知らぬ女性が助けてくれて……。
「そうだ、新井さん。あの女性は?」
「鷲尾のこと? 心配してしばらく君についていたけれど、あまり遅くなってもいけないから帰したよ」
助けてくれただけでなく、一緒にいてくれたのだ。また人に迷惑をかけてしまった。その事実にチクリと胸が痛む。