41才の中学2年生

敗者坊主頭デスマッチ!


金澤龍也…コイツはクラスの中でボスキャラ的な存在だった。

長身でイケメンだから女にはモテた。
しかし超が付く程の短気でしかも頭が悪いw

クラスの連中はコイツにビビっていた。とにかく威嚇的で気に入らない事があれば人に八つ当たりする…

まぁ、いわゆるヤンキーってヤツだ。

気の小さいヤツなんざ、しょっちゅうパシりに使われていたもんだ。

特にチャッピー。コイツは虎の威を借る狐のように、龍也にはヘコヘコして、他の連中にはデカイツラして威張ってたクソヤローだ。

卒業までこんな感じだったから、卒業式の時、ようやくコイツと離れられる!って喜んでヤツもいっぱいいたしな。



そういやコイツ、高校に入ったはいいが、ソッコーで他校から来たヤンキーにタイマンでボッコボコにされたっての聞いて、皆で大爆笑したっけなぁw

その事があっという間に知れ渡り、コイツにビビるヤツはいなくなった…プッ、哀れなヤツだ、所詮は井の中の蛙って事だ。


だが、ここにいるクラスの連中はそんな事をまだ知らない。そりゃそうだ、まだ先の話だからな…


先の話…あっ!ヤベッ!あのジジイに知られたらまた頭がギリギリと締め付けられるのか?

オレ「おい、ジジイ!いるか?」

またインチキ臭く、ボンっと煙と同時に現れて来やがった。

(あの杖何とかして奪い取りてぇな。何か方法はないのかよ?)

【何じゃ?】

ったくこのジジイのせいでオレは龍也とタイマンする事になったじゃねえか!

オレ「おい、ジジイ!まさかここでアイツとタイマンしたらまたこの輪っかで頭締め付けるのか?」

【何?あの男とケンカするのか?】

ジジイは龍也の顔をジーっと見ている…ホントにオレだけにしか見えないのか?

オレ「いいか、ジジイ!これはケンカじゃねえ、コイツのお陰で皆ビビってんだよ。だからオレは皆の為にタイマンする。それなら問題はねぇよな?」

そうだよ、オレには皆に対して傍若無人に振る舞う龍也をこらしめるという大義名分があるんだからな、これも徳を積む事になるんじゃないのか?

【うーむ、確かにこの様子じゃこやつに皆恐れているからのぅ】

オレ「だろ?皆ああやって隅っこで何も出来ずにただ見てるだけじゃん?いつまでもコイツにこんな事させたらつけあがるだけだろ?だったらここで懲らしめるのも、徳を積むって事になるんじゃねえのか?」

龍也「おい、お前さっきから誰と喋ってんだ?まさかビビって頭おかしくなったんじゃねえのか、おい。何ならここで土下座すっか?そしたら許してやってもいいぞ、ウヒャヒャヒャヒャ」

…典型的な頭の悪いヤツの考えだよなぁったく。

【うむ、仕方ない、今回だけだぞい。その代わり思いっきり懲らしめるのじゃ!】

ジジイは杖を振りかざし、また怪しげな呪文を唱えた。

【ハンニャラハンニャラ、ホニャラカピー、ニーハオサイツェン、アンニョハセヨー!】

…呪文かよ、これって。

オレ「あっ!何だ何だ、いつの間にこんなもんが?」

手にはオープンフィンガーグローブ、両足にはレガースとニーパッド、そして何故か腰にはチャンピオンベルトが巻いてあった。

オレ「おい、ジジイ!これじゃ総合格闘技のスタイルじゃねえかよ」

【うむ、これはケンカではない、試合なのじゃ!】

…ジジイ…ワケ解んねぇよ、このスタイルじゃ…

オレ「…あっ、これ部屋にあったチャンピオンベルトじゃんか!何も呪文でわざわざ学校に持ってくる事ないだろうに…」

制服姿でグローブやチャンピオンベルトって…まぁいいか。

【これで思う存分闘うがよい!では健闘を祈るぞい】

そしてまた煙と共にジジイは消えた。

龍也「おいおい、何だよ、その格好はダッセーな!なぁおい!」

龍也は後ろにいるクラスの連中に同意を求めた。

チャッピー「ダァッハッハッハッハッハ!山本~、何だそのダセー格好はw」

皆もそれに強要されるかのように、力なく笑う…

『あ、あはっ』

『アハハハハ…』

『クスクスクスクス…』

…今思ったんだが、当時はコイツにビビっていた。だが、よく見るとコイツのどこにビビってたんだろ?
ただ単に意気がってる中2って事だろ?
まぁ、それもこれもオレが実年齢41というせいもあるのか、色んな経験してきたし、こんなヤツよりもっと怖いヤツなんていっぱいいるんだぞ!
特にウチの部長!ミスすりゃネチネチ、ギャーギャーと…

いかん!すっかり前置きが長くなってしまった。

要はこのバカを懲らしめればいいって事だ!

オレ「いいか、コノヤロー!テメーの力で奪い取ってみやがれ、どうだっ!」

オレはアントニオ猪木の保持していたIWGPのベルトのレプリカを手に持ち、高々を上げた!

やっぱりプロレス的演出も必要だな、こういう時は、うん!

龍也「テメー、さっきからギャーギャーと何喚いてんだ、コラァ!」

…う~ん、全然怖くない。
むしろ滑稽だ、ウワハハハハハハハハハ!

泰彦「おい、智!もういい加減にしろよ!お前が龍也に勝てるワケねぇだろ!」

オレたちの間に泰彦が割って入ってきた。

龍也「牛島、テメーは邪魔なんだよ!」

ドカッ!

牛島「…ぐっ!」

泰彦が龍也にみぞおちの辺りを蹴られた!

その場で泰彦がうずくまった。

オレ「おい泰彦!大丈夫か?」

…オレは泰彦を起こし、黒板の下にある椅子に座らせた。

そしてチョークを持ち、黒板に書きなぐった。


【金澤龍也VS山本智 敗者坊主頭デスマッチ!】

『ええっ?』

『坊主?』

『マジかよ…?』

ざわめくオーディエンス、そして挑発するオレ、怒りの沸点がマックスの龍也!

やっぱプロレス的演出は必要だからねぇ~っ!

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