嫌い、嫌い、嫌い。でもやっぱりすき。
「どんな人って、会話するにしてもすれ違いざまの挨拶と、必要なときに必要なことを話すだけの人だよ。距離を縮めようとしても何気ない話なんてなかなかできないし、したところで上手くかわされてすぐ終わっちゃうんだ」
そう言って、アイツは切なく笑う。
「追いつきたくても追いつけない。近くにいるのに遠い。どんなに努力したってどうにもならないってわかってんだけど、諦めらんないんだよね」
人を好きになるって、こんなに苦しくなるんだな。
……って、最後に聞き取れないくらい小さな声で呟いて、アイツは机に突っ伏した。
妙に濁した、曖昧な言葉。
けれどあたしには、その人がどんな人なのかって、なんとなくわかったような気がした。
ああ、そうなんだ。
その人は、あたしじゃない。
……あたしじゃ、ないんだ。
だってあたしはなんでも話せるひとだもん。
こんな恋バナですら。
聞きたくないことだって、色々言えちゃうんだもの。