【BL】お荷物くんの奮闘記
 下りまで魔物に遭遇するのは面倒だ。手っ取り早く脱出魔法と移動魔法で東国まで戻ろうと話がまとまったところで、リュータがあっと声を上げた。


「忘れてた! ユウジ、さっき倒した天使のことなんだけど」


「スマホのHP欄の上にはミカエルって書いてあったな。あれがどうかしたか?」


「うん。天使が天使として倒されたなら、何かあめ玉? 宝石? みたいな小さなビー玉くらいの石になるはずなんだ。えっと……ウリエルも含めて。

おれが赤色の石だから、たぶんミカエルは緑色の石だと思うんだけど、このフロアのどこにも見あたらなくて」


「倒せてないってことか? HPは確かにゼロになって――あ、あれじゃないか。ノアの奥義で一緒に木っ端微塵とか」


「石は倒された直後は何の干渉も受けないから、それはないと思うんだ。あとね、倒せてはいると思う。けど、ひょっとしたらその石、誰かに持ってかれてないかなって」


 誰かが持ち逃げしたってことか? 何の役に立つかも分からないようなビー玉をか。それにあの場にはオレらしかいなかっただろ。いったい誰がビー玉持って帰るっていうんだ。

いつになく深刻そうな顔をして言葉を紡ぐリュータに、そういった茶々は入れずにひとまず最後まで話を聞いてやることにする。


「あのね、お姉ちゃんの話、そのまま天使が食べられたんだと思ってすごい怖かったんだけど。

よく考えてみたら誰にでも食べれるサイズだなって思って。……天使の宝玉なら」
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