スーゼントの怨霊

消えてゆく望み

翌日の早朝から村長に言われた通り、石造りの家の捜索にあたった。
開ける度に怨霊が出てくるらしいのだが、ハデスを倒せば全てが終わる。
強い気持ちを胸に呪われた扉を開いていく。
魂だけの怨霊がナム達の体をすり抜け、ハデスのいるサランガルガの牢獄へと引き寄せられるようにして飛んでいった。

中に入ると村長の話が蘇る。
ここに来るまでは信じていなかった。
いや、信じたくなかったのだ。
村人達の目を盗んでナムを呼び出し、ハデスの性格に異変がないかをちょくちょく確認していた。
牢獄に幽閉した時も心を痛め、数日間寝込んでしまうほど優しい人だった。
そんな人が壁や天井一面に焦げ茶色い血のシミを残すほどシュリバ達の皮を剥ぎ、フックの滑車やチェーンソーが錆びて使い物にならないくらい殺戮を繰り返した。
部屋の奥にある焼却炉からは焦げ臭く、生き物の焼けたような悪臭が風に乗って鼻を刺激する。
鼻をつまんで指示通り焼却炉の中を手探りで調べた。
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