星天ノスタルジア

ふいに鳴り響いた重低音が満たされたお腹を刺激する。視界に眩しい光が飛び込んだで、テラスの方から歓声が上がる。夜空には無数の光の欠片がひらひらと舞っている。


「観に行こうか」


彼が立ち上がる。
ひらりとテラスへと向き直って、彼はすぐにでも歩き出しそう。もたもたしていると置き去りにされてしまうと慌てて立ち上がったら、彼が私へと手を差し伸べた。


この手を掴んだらどうなるんだろう。


一瞬頭の中を疑問が過ぎったけれど、
「ごめん、大丈夫」と声に出す方が早かった。


彼の手を掴むはずだった手でワンピースの裾を撫でて、彼の隣に並ぶ。差し伸べた彼の手は行き場をなくして空を舞い、ゆっくりと私の腰へと着地した。


彼はなんとも思ってないのかもしれないけれど、私はなんだか居心地が悪い。


だって彼が腰に手を回したことなんて今までなかった。もしあったとしても結婚して娘が生まれる前だろう。
まさか食前酒の梅酒で酔っ払ったなんてことはないだろう。それ以外お酒は飲んでいない。


きっと、これは花火の力。


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