職場恋愛
side 林(りんちゃん)


16時過ぎ、高木ちゃんに用があって事務所に入ったら奏太がいたから、ついでにと思ってまたゆーちゃんになんか言ったんじゃないかって聞いてみることにした。


「あぁ。俺じゃないわ」


何?そのなんか知ってるみたいな言い方。


「荒木さんがどうかしたの?」


高木ちゃんも話に入って私の用件なんてどうでもよくなっていた。


「さっき呼ばれてたじゃん」


インカムのイヤホンを触りながら奏太が話し始めてくれた。

確かに少し前に家電に来てって言われてたね。

「呼んだの岩木なんだけど」


年上のベテランを呼び捨てにするとか、恨みを買われるようなことはやめてほしいんだけどね。


「あのー、誰?ゆーちゃんの同期の女」


ゆーちゃんの同期の女?
他所の新入社員の顔と名前はまだ覚えてないっていうか全然知らないよ。


「真鍋さんかな?肌が白くて声が透き通った子じゃない?」


「あーそう、多分それ」


さすが高木ちゃん。
マネージャーだから知ってるんだね。


てか、それ、って。


「それが?」


面白いからわざと真似して言う。


「仲が良かったんじゃないのかねー。
いやー、岩木と真鍋?がサボりたいがためにゆーちゃんを呼び出したらしくて。
代わりに立ってろって言われてた」


ほっぺをポリポリかきながらめんどくさそうに話す奏太。

嫌いだもんね。

人間関係の拗れとか。
女同士の醜い争いとか。


「それで落ち込んでる、と」


うーんと考え込む高木ちゃんだけど、こればっかりはどうしようもないでしょ。

入ったばかりの時はどの人が敵か、どの人を利用できるか、どの人が味方かって吟味するもの。


それが段々分かって来たっていうか、真鍋って子の中で確立し始めたんでしょ。

まぁ〜最初みたいには戻れないでしょうね。


「で?」


「あ?」


柄悪い。


「まさか、岩木さんと真鍋って子に何も言わずに連れ戻したんじゃないでしょうね?」


「なんも言ってねーけど」


はぁあぁあぁ。
これだから男は。


「ちょっとくらい守ってあげなさいよ」


「…逆効果じゃね?」


「ん?」


攻撃してくる人に味方がいるっていう証明にもなるし、何より自信がつくでしょ。
自分には味方がいる、大丈夫、負けないっていう。


「女ってのは面倒な生き物だからな〜。
嫉妬に嫉妬を重ねて化け物みたいになるだろ。俺は参加したくないね」


結局自分が関わりたくないだけじゃんか。


「頼りがいのないリーダーだこと」


「最近岩木は特に調子乗ってるから、近々シメるけどな」


「シメるって?」


「そりゃあ、ね」


今の奏太の顔がどんな顔かと聞かれたら、それはもう性格が悪いクソ野郎としか言いようがない。


「あんた……」


「寺内に全部チクる」


…最低。
なんかもっと違うやり方はないわけ?


「やめちゃったらどうすんの!?」


「やめねーだろ。あの年で彼氏もいない独身だぜ?再就職も難しいだろうし、ここにいるしかないだろ。
まぁ、実は金持ちで働かなくてもヘッチャラなんですってんならやめるかもな。
やめたとしても知ったこっちゃないけど」


まぁ、無責任だこと。


別にいいけどさ〜。


「携帯に悪い空気運ばないでよ?」


「当たり前」


「携帯のみんながギスギスしたら容赦なく転職するから」


そんなとこで働いたって楽しくないからね。
むしろストレス溜まるだけ。


こんなこと言ったら家電さんに失礼か。


「へいへいお先にどうぞ」


イラっ。


「止めなさいよ!」


「なんで?」


あぁ、これだから男は。
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