職場恋愛
仕方なく充電器に挿して自力で考える。




………………私は天才かもしれない。

焦げた部分、包丁で削ればいいんじゃない!?

それだ!!!
全部削ろう!!





買い足した分も全部焦がしてるから数が尋常じゃなくて…。
20分くらいやって3分の1しか終わってない。

これじゃ1時間かかるよ。


はぁ。




鶏肉は保存がきくのかなぁ。
20分も充電してたら30パーセントくらいにはなるよね。

やっぱりネットを頼りにしなきゃやってらんないね。



リビングへ行って調べようとしたら航が起きてしまった。


「…もうすぐ22時か…」


早!
眠り浅!


こりゃー、不眠だ。
航さん不眠だ。


「ベッドで寝なよ。ソファーじゃ疲れ取れないでしょ?」


「んーん。もう寝たからいいの」


「航、お腹空いてる?」


「あ、梅干しと納豆?」


「あ…そう。本当はね、鶏肉の照り焼き作ろうとしたんだけど、全部焦げちゃって。私が払うから、そこのファミレス行かない?」


ついに諦めた荒木です。

私もお腹空いたし、めっちゃ近所にファミレスがあったはずと思って言ったら、航は少し考えた。


めんどくさいかな。


考えた顔のままキッチンへ行ってしまった航を追いかけて一緒に黒焦げの鶏肉を見つめる。

…気まずい。



「これ、削いだの?」


「あ…うん。汚いよね」


黒焦げの隣に置いてある白いお肉を指差してまた考える航は、小さめの鍋に醤油とみりんと酒と砂糖を入れて火をつけた。


まるで照り焼きのたれみたい。


グツグツするのを待つ間、眠そうな顔で何度も瞬きをしながら残った黒焦げの鶏肉を手にとって、慣れた手つきで焦げを削り始めた航。

めっちゃ早いんですけど。



あっという間に白く変身した鶏肉たちを航がお皿に盛りつけて、そこにさっきの照り焼きソースっぽいものをかけて、更に冷蔵庫にあったレタスを添えた。


「一緒に作った照り焼きチキンの完成」


一緒にって、私焦がしただけだけど。


ものの10分で作り直せるなんて。
何者ですか。


「手間かけさせてごめんなさい…」


眠くて疲れてるのにね。


「全然。これオニオンスープ?」


「うん、それを調理したのはお鍋だから私じゃないけど…」


「えぇ?何言ってんの?面白いこと言うね」


クスクス笑われたけど本当のことだもん。
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