職場恋愛
岩木さんの性格が悪いのは分かってたけど、飯島さんも同じくらい性格が悪いなんて、ショックを隠しきれない。



かなり長い間泣いていた香織だったけど、段々落ち着いてきて、目が虚になっていた。


「どうすんの」


恋人だと思っていた人が実は真逆で。
信じていた先輩に一瞬で裏切られ。
本当に好きだった相手の前で、自分のしたことを暴露され。
他の部署のマネージャーとリーダーにも知られて。


絶望のどん底だと思う。


人間不信にもなるだろうし、恋愛もできなくなると思う。
仕事を続けることもできないかもしれない。

なにもかもを、本当にほんの一瞬で失くして。


『かわいそうに』と同情したくなる。



「…店長代理のところに行ってきます」


どこを見ているのか分からない様子で立ち上がろうとしたけど、高木さんがそれを止めた。


「真鍋さん。よく聞いて。あなたを会社じゃなくてあえてここに呼んだのは、島田くんと逢坂くんの優しさであると分かってほしい。

あなたは本当に本当にやってはいけないことをしてしまったよ。だけど、ここにいるみんなは、真鍋さんを店長代理に突き出そうと思って話を聞いたんじゃない。

恋愛に真っ直ぐなのは本当に素晴らしいことだし、尊い。
そんな素敵な長所を無駄にしてはいけないよ。
山野くんは怒ったらすぐ口に出るけど、今日は1度も怒鳴ってないよね。
それはなんでか分かる?

真鍋さんも十分悪いことをしてしまったけど、真鍋さんの純粋な気持ちを利用した人がいて、その人たちはもっと悪い。ある意味真鍋さんも被害者だってことを理解しているからなんだよ。

家電のリーダーくんがどう思ってるかは分からないけど、一先ずあなたがやったことを知っているのはここにいる5人とその2人だけ。


彼らの優しさを汲んであげることはできませんか?」


頼りないと思っていた高木さんがまさかこんなことを言うなんて思いもしなくて唖然としてしまう。

香織のために言ってるのに、航や島田さん、山野さんのために行かないでなんて。

そんな言い方をして、また付け上がったらどうするんだろう。
< 285 / 543 >

この作品をシェア

pagetop