ヘップバーンに捧ぐ
専務の動物のエンブレムの愛車が
夜の帳の中、颯爽と駆け抜ける。


専務が連れて来てくれたのは、
会社から、数分の
有機野菜の創作ダイニングだった。

しかも、何故か貸切で、
食欲が無い私が、食べれるものを既に
注文してくれていた。

そのおかげか、
食欲なんて皆無だった私の胃袋は
嘘のように、目の前に出される料理達を
飲み込んだ。

最後の、冬瓜を使ったデザートまで
完食してしまった!
甘くて、とろっとしてて美味しかった。

専務が、席を外した時、
料理長の五島山さんが、
ご挨拶に来られた。

『お口に、合いましたようで何よりです。』


「全て、美味しくて美味しくて!
おデブなったら、どうしよう………」

『その際は、私にお任せ下さい。
生涯、お世話させていただきますので。』

「はっ?」

『いやいや、翔駒の言ってた通りだ。
素敵な、お嬢様だ!
出会いが、もっと早ければな。』

『お前それ以上喋ると、
お前の口、裂くぞ…』

『嫌だぁー
冗談じゃないのょー
そんな、プリプリしないの!』

オネェ口調…
なんか、くねくねしてる

『ごめんね、ふざけ過ぎたね。
僕は、オネェじゃないからね!
女の子大好きだから!
こいつおっかないでしょ?
僕ね、こいつとは高校から一緒なの。
これから、色々と出会うだろうしね!
五島山 (ごとやま)ミチルと言います。
以後お見知りおきお』

『お見知りおかなくていいよ。
出よう、咲良ちゃん。
こんなやつ、あん時締めておけばよかった』

「物騒なこと言わないで下さい。
すみません、お会計お願いし『もう、済んだよ。
帰ろ帰ろ!』

「えっ、そんなの駄目です。
私が食べた分は何が何でも払います!
おいくらですか?」

『咲良ちゃん
今日は、食欲無い君が元気になって欲しくて誘ったのは俺。
しかも、好きな女の前なんだから
カッコつけさせてよ』

「とはいえ、申し訳ないです。」

『じゃ、こうしよう。
ふたりっきりの時は、
俺の下の名前で呼んでくれるかな?』

唖然、
話通じてない。

「どうして、その切り返しになるんです?
呼びませんよ。

何です、その雨に濡れた子犬の目は!

もう分かりました!
今日は、ご馳走になります。
次は、私が払いますからね!」

んっ?
あれっ?

『次のデートの約束してくれたね。
ミチル今の、聞いてたよな?』

『うん、僕とデートしてくれるんだって!』

『てめぇ、いっかい死ぬか。』

「違います!これは、言葉のあやと言うか、
売り言葉に買い言葉と云うか
取り敢えず、忘れて下さい!」

5分前に、戻りたい………
議長、発言の訂正を求めます!

『いいや、しかと聴きましたぜ。咲良ちゃん』

『だって、もう僕の事が恋しいんでしょ?
おいで、僕の胸は、君のためにあるんだよ。
さぁ。………イッテェ、わかったよ』

「今の発言は、訂正をお詫び申し上げますが、
何時も、お昼ご飯を用意して頂いてたり
今日も、このような美味しいご飯もご馳走して
頂いたこともあるので、
きっちりと、お礼させて頂きます。」

人間としての当たり前な事だよね?
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