ヘップバーンに捧ぐ
怒涛のランチタイムが終わって、
午後の業務が始まった。

私は、マーケティング部第一で事務員
として働いている。

マーケティング部第一は、
総勢20人であり、仕事内容は
市場調査やトレンドの発見など。

私の仕事は、基本的に内勤で、
仕事は、多岐に渡る。

そんなマーケティング部の中で、
非力ながらも、出来る限り
みんなが、仕事しやすくサポート出来ればと常日頃心掛けている。

『今日は、専務と何食べたの〜?』

おぉっと、忘れてはいけない
この人物。
我が社で、社歴の長いパートさんの
松室 真子さんである。
この会社で、知らない事はない。
社員の昨日出来事、
観葉植物の葉っぱの健康状態、
掃除機のモーター音の違いまで
わかるぐらいの人だ。

コーヒー好きなご主人と息子さんと
猫のコマちゃんとの4人?
家族だそうだ。
何と言っても、56歳とは見えない
美貌の持ち主である。

そんな、松室さんは、お仕事をお休み
されていたが昨年の春、復帰されて
マーケティング部に所属になった。
いつも、花のような笑顔で
お喋りしてくれる。

そして、あの怒涛のランチタイムの
コンテンツを細部まで
興味津々にお聴きになるのだ。

「今日は、辰前亭のプルコギ丼と麦味噌汁でした。
夏休み何するかとか、両親はお盆に日本にいるのかとか、お墓は何処にあるのとか、でしたかね…?
なんなんでしょうね?あの人」

『あの子ったら、
遂に勝負に出たわね…』

「何か、仰いました?」
今、とてつもなく
神々しい笑みでしたよ?松室さん。
あんな美人が、そんな笑顔出したら
ほら、掃除のおじさん箒
落としちゃいましたよ。

『ううん、なーんでもないの!
我が家に、新しい家族が仲間入りするのも、そう遠くはないなと思っただけ!
ふふふっ』

何だ、この可愛い生き物は!






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