My hero is only you
 人気のない図書室。

 特別に借りた鍵を使って、ドアを開けた。

 ここでの思い出はたくさんある。

 初めてこのドアを開けた時のことを、思い出す。

 あの日、あの人が座っていた席に向かい、そこからドアを眺めた。

 どんな風にあの人の瞳に私は映っていたのだろう。

 ガラッと閉めたはずにドアが開く音がして、誰かが中に入ってきた。

「先輩・・・」

「やっぱり、来ていたんだね」

 そう言いながら、ゆっくりとこちらに向かって歩いてきて、そばで止まった。

「ここに来ていると思ったよ」

「先輩が来たのは、それを確かめるためですか?」

「そうじゃないよ、とは言えないよね。今、ここに俺はいるしね」

「来ていただいてありがとうございます、と言った方がいいんでしょうか?別に、頼んでいないんですけれど」

「・・・」 

 目の前で黙り込まれてしまった。

 素直な気持ちで、言葉を返すことはできない。

 言いたいことは、こんなことじゃないのに。

「随分ひねくれて言い方だなぁ。まぁ。それはしょうがないかもしれないけれど。でも、最後は笑顔で話したいよ。俺にとっては可愛い後輩の1人だったんだから」

 振った人と振られた人。

 本当なら、笑顔で話すことなんてできなのに。

 それでも、無理にでも笑顔を作ってしまうのは、まだ好きなせいかな。
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