My hero is only you
「かなわないなぁ」

 見上げるといつもの笑顔が見ていた。

 もう少しだけ、この笑顔を見ていたいけれど。

「ここで、本当のさようならですね。初めて会った場所で最後に会えて、よかったです」

「そうだ。これを渡そうと思っていたんだ」

 ズボンのポケットから取り出された一枚の紙。

 受け取って開いてみると、名前と電話番号が書いてある。

「これって・・・」
「可愛い後輩への餞別。君の恋人にはなれないけれど、相談に乗れる先輩にはなれるなかぁって考えていた。この紙をどうするかは君次第だけれどね」

「やっぱり先輩はずるい人ですね。最後の最後にこういうことをするって」

 そんな人だから、好きになったんだけれど。

「先にここから出て下さい。そのまま振り返らずに。それが私からの最後のお願いです」

「わかった。それじゃあ・・・」

「さようなら」

 先にさようならを告げた。

「さようなら」

 図書室を静かに出て行く足音が、どんどん遠ざかっていく。

 これですべて終わったのだ。

 物語のようにハッピーエンドにはなれなかったけれど。

 明日からはまた、新しい日々が待っている。

 きっと、新しい恋に巡り合うために。

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