極上初夜は夫婦のはじまり~独占欲強めな社長ととろ甘結婚いたします~
「荷物重そうだな。持つよ」

 隣にいた涼我が突然私からボストンバッグを奪って自分の肩へ乗せようとするから、慌ててそれを止めた。

「自分で持てるから」

 私の主張に涼我が渋々うなずくと、そばにいた樹里があきれるようにクスクス笑い出した。

「涼我はあからさまだよね」

「なにが?」と私が首をかしげると、「わからない和奏がおかしい」と樹里に返されるし、涼我は樹里に「余計なことを」と小声で睨みをきかせていたのだけれど、私にはこのやり取りがよく理解できなかった。

「夜の食事は七時だから。それまで温泉にでも入ろうよ」

 樹里が腕時計で時間を確認しながら、ロビーにいたみんなに声をかける。
 食事までにゆっくりと休憩をして温泉を楽しむにはちょうどいい。

「賛成! じゃ、とりあえずお部屋行こう」

 私の言葉にみんなうなずき、歩き始めた。
 蘭々ちゃんと樹里と私は同じ部屋だけれど、もちろん涼我だけ別部屋だ。

「俺、こっちだから」

 私たちに軽く合図して、涼我が自分の部屋へ入っていく。
 女三人に男ひとりでは、男女で分けたときにバランスがいびつだし、やはり涼我の友達も一緒ならよかったのに。

「涼我さんって、優しいですね」

 部屋に着いてバッグを肩から降ろすと同時に、蘭々ちゃんが明るい声音で話し始めた。
 私は意味がわからず、うまく反応できなくてポカンとしてしまう。


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