極上初夜は夫婦のはじまり~独占欲強めな社長ととろ甘結婚いたします~
 涼我にいつも飲みすぎるなと注意されているのもあるし、自分自身体調がイマイチだという自覚があるから深酒はせず、短時間の滞在で『小粋』を後にした。
 頬をかすめる夜風が気持ちいい。

 蘭々ちゃんと話せてよかった。
 涼我とどうなっているのかを聞けたし、蘭々ちゃんがすごくいい子で癒された。

 しかし、年下に気を遣わせた自分が情けない。もっときちんとした大人になって、蘭々ちゃんの相談にも乗ってあげられるくらいにならなくちゃ、とそこは素直に反省しながら、ふわふわとほろ酔いで家路に向かう。

 もう少し先に丁字路があり、左に曲がると私の家へと続くが、右に曲がると涼我のマンションがある。
 蘭々ちゃんと話をしたからなのか、急に涼我に会いたくなってきた。

 涼我は今、家にいるだろうか、いきなり電話もせずに行ったら驚くかな、と思考を巡らせながら歩いていると、丁字路の街灯の下に人が立っているのが見えた。

 逆光で顔はよくわからないけれど、背の高い男性だ。
 夜道に男性が立っているだけで、少しばかり気味が悪い。小走りで通り過ぎようとしたところで足を止めた。

 風が吹いて、男性の髪がふわりと揺れる。
 私に気づいたその人が、こちらに足早に近づいてきたのがわかって、私は逆に二歩、三歩と後ずさりした。

「電話でもメッセージでも連絡がつかないから来ちゃったよ」

 その人物は、私が今一番会いたくない三浦さんだった。
 瞬時に恐怖で足がすくむ。私の詳しい住所までは教えていなかったから、こうして近所で待ち伏せされるなんて想像の範囲を超えていた。

「俺からの連絡、無視するのひどくない?」

「…………」

 三浦さんの執拗さが浮き彫りになり、底気味悪い感情まで芽生えて、言葉を失ってしまう。

「おい、なんとか言えよ」

 まただ。また、裏の顔をした三浦さんの怖い口調になった。


< 84 / 114 >

この作品をシェア

pagetop