【短編】涙の理由を、言い訳させて。
そう、決心しようと……
「っ…あゆちゃん…!!」
思ったのに。
聞き慣れた声。理希の声。
「っ……だから…」
なんで理希がここにいるの?
林さんと、いたくせに。
わたしじゃなくて、林さんと帰るくせに。
それとも…
……期待、しちゃってもいいのかな。
「やっぱり、あゆちゃん傘忘れてる」
「…え?」
「ほら…!僕の傘、貸してあげるから」
「………」
"貸してあげる"
言葉の意味が分かったら
傘なんて、もういらない。
……意味がない。
「大丈夫。理希が使って」
「あゆちゃん風邪引くよ。
それに、林さんも傘持ってるから
気にしないで…!」
「…っ…ならもう、早く行きなよ。ほらっ…!」
零れそうな涙を、見られたくなくて
無理やり後ろを向かせてしまった。