俺様Dr.に愛されすぎて
「あっ、そうだ。そういえば彼女、真木先生と付き合ってたのよ!」
「へ?」
真木先生と、付き合ってた?
一瞬その言葉の意味が理解できず、キョトンと固まってしまう。
あのふたりが、付き合っていた?ということは……彼女は、真木先生の元カノ!?
「もう何年も前だけどね~、黒川先生がニューヨークに行ってから遠距離になって別れちゃったみたいなのよね。けどああして見てるとやっぱりお似合い……はっ!」
宮脇さんはぺらぺらと話してから、話し相手が私だと思い出したのか、『しまった!』というように口を手で覆った。
「ご、ごめんなさいね~、冗談よ冗談!さ、仕事戻ろーっと」
宮脇さんはそう言って、冷や汗をかきながらその場を去って行く。
冗談、っていうよりはどう見ても本音がこぼれちゃった、って感じだけど。
そりゃあそうだよね。美人でスタイルもよくて、海外で働くエリート……そりゃあ真木先生とだって絵になる。
それにひきかえ私は……いたって平凡な営業マン。顔も平均的だし、色気はない。驚くほど真逆だ。
……もしかして、真木先生が私に言い寄るのは、ただの物珍しさからだったりして。
なんて、また嫌なことを考えてしまいながら、歩くふたりにこそこそとついていきながらその様子をうかがう。
そんな私の視線に気づくことなく、黒川さんは細い腕を真木先生の腕にそっと絡めて抱きついた。
「ね、梓。せっかく再会したんだし、ヨリ戻さない?私たち相性はよかったと思うんだよね」
って、え!?
ヨリをって……!?
冗談なのか本気なのか、笑いながら話を持ちかける彼女に真木先生は表情ひとつ変えることなく流す。