俺様Dr.に愛されすぎて
「なにバカなこと言ってるんだよ。戻すわけないだろ」
「えー。あ、もしかして彼女いるとか?」
「彼女はいないけど、好きな人ならいる」
『好きな人』、そのひと言に胸がドキッと音を立てた。
元彼女の前でも、そう言い切ってくれた。
その真っ直ぐさが嬉しいと感じると同時に、やっばりその気持ちを信じたいと思えた。
するとその瞬間、視線に気づいたのか真木先生はなにげなくこちらを振り向き私を見た。
「あれ、藤谷?」
「え!?あっ!」
はっ!気づかれた!
こっそり見ていたなんて知られたら引かれてしまいそうで、私は慌てて『たまたま通りがかっただけです』というような顔をしてみせる。
「お、お疲れ様です。休憩時間ですか?」
「あぁ」
頷きながら黒川さんの腕をほどかせる真木先生に、続いて黒川さんも私に視線をとめた。
「梓、誰?営業さん?」
「医療機器のお取引をさせていただいております、新和メディカルの藤谷と申します」
「あぁ!新和さんの!初めまして、黒川です。よろしくね」
ふふ、と笑う彼女は、やはり美人だ。
大きな口が愛嬌よく、肌も綺麗で、ケチのつけどころが見つからない。
ふわ、とほのかにただよう香りもいい香りで、私が男ならここで落ちているかもしれないと思った。
「おーい、藤谷?なにぼんやりしてるんだよ」
「あっ!いえ、なんでも!」
真木先生の声にはっと我に返る。そんな私を見て、真木先生は意味が分からなそうに首をかしげながら笑った。
「しっかりしろよ。今日はちゃんと飯食ってきたか?仕事中に腹鳴らすなよ」
「わかってます!ごはんまだですけど、鳴らしません!」
からかうように言って、真木先生は私の頭をぽんぽんと撫でた。
なんて色気のない会話……。けど、その手の優しさにまた胸が鳴る。
やっぱり、彼の『好き』の言葉を信じたい。
そしてこの胸にある思いを、伝えたい。
気づけばこんなにも、思いは膨らんでいた。