俺様Dr.に愛されすぎて



少し緊張しながら電話を耳に当て、呼び出し音を聞く。

出るかな、出ないかな、切っちゃおうかな。

そう思ったその時、プツッという音とともに呼び出し音が途切れた。



『もしもし?』



耳のそばで響く低い声に、出た!と心臓が跳ねる。



「も、もしもし……藤谷ですけど。朝からすみません。今大丈夫ですか?」

『あぁ。今ちょうど夜勤あがって帰るところだから大丈夫』



ちょうど外に出たところなのだろう。周囲はがやがやと人の声が聞こえる。

この時間にあがりなんだ……夜勤って大変だ。



「この前はありがとうございました。助かりました」

『どういたしまして。もう体調はいいのか?』

「はい。もうすっかり」



「そうか」と相槌をうつ彼が、電話の向こうで笑っているのが想像ついた。



『じゃあ、お礼貰わないとな』

「へ!?お礼!?」

『診察代にベッド使用代、薬代と車代……全部タダってわけにはいかないしなぁ』



うっ……。

言われてみればそうだ。思えば先日、私は散々お世話になっておいて1円も支払っていない。

お礼に、となにを請求されても文句の言いようがない。



物だろうか現金だろうかと想像しながら言葉の続きを待つ。



『じゃあ、体で払え』



すると彼から発せられた言葉に、思わず「は!?」と大きな声が出た。



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