あなたのことは絶対に好きになれない!
キスの感触を思い出し、ドキドキしながら、さっきのオウスケくんの言葉を思い出す。


『好きになれなくてもいいよ。それ以上に愛してくれれば』



……一見、自信に満ち溢れた強引な言葉。

だけど、この言葉の本当の意味はきっと、彼への気持ちに不安や迷いを抱えている私への〝気にするな〟という言葉なんだろうなと思った。

きっと、普通に〝気にするな〟と言っても私が気にするだけだと思ったんだ。
だから、あんな意地悪な言い方をしたんろうな。


意地悪な彼の、優しさなんだ。



「お待たせ」

そんなことを考えていると、水の入ったコップを持って、彼が戻ってくる。

酔ってなんかいないけど、火照った顔を落ち着かせるために水は飲ませてもらおうとコップを受け取る。


一口飲んで、私は「そう言えば」と口を開く。


「この状況、あの時と少し似てる。オウスケくんと再会して、付き合うことになったあの日。私が倒れちゃって、こうして水をくれたよね」

あの時のことをゆっくりと思い出す。
大嫌いな幼馴染と再会して、まさか付き合うことになって。でも、何故か憎み切れなくて……。


で、気が付いたら彼の家にいたからかなりビックリしたっけ……。



すると彼が「酔って倒れた時のこと、どのくらい覚えてる?」と聞いてきた。



「うーん、あんまり……。あ、でもそう言えば」

「そう言えば?」

「唇に、優しい感触がしたような……」


ほとんど覚えてないけれど、柔らかで温かい感触はうっすらと覚えている。


あの感触は何だったんだろう、そう考えていると。


「もう一回、思い出させてやろうか」

そう言って、私の手からコップを奪い、水を自分の口に含む。


え?と不思議に思っていると、彼の唇が再び私に近付くーーそして、さっきよりもひんやりとした唇が、私の唇に触れる。
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