あなたのことは絶対に好きになれない!
「具合はどう?」

そう言って私の顔を覗き込む女性に、「大丈夫です……」と答えてはみるものの、誰なのかサッパリだ。

この家って、オウスケくんの家なんだよね?

も、もしかしてオウスケくんの彼女?


そう思っていたのだけれど……。


「央介、何ベッド上がってんの。降りな」

「ちっ」

「舌打ちすんな!」


あれ? 初めて会う女性のはずなのに、このやり取りがどこか懐かしいような……


あっ⁉︎


「深央(みお)ちゃん⁉︎」


私がそう呼ぶと、その人は「あれ? 気付いてなかった? 久しぶりだね、久美香ちゃん」と笑ってくれた。

この柔らかな笑顔。昔のままだ……!

深央ちゃんはオウスケくんの三歳上のお姉さんだ。
私も子供の頃、よく遊んでもらったっけ……。
オウスケくんと同じ血を分けた女性とはとても思えない、優しいお姉さんだった。


「深央ちゃん、深央ちゃん」

意味もなく、ただただ名前を連呼してしまう。
懐かしさと、そしてこの状況で登場してくれたことに安心してしまった。


あれ? ということは……?


「ここ、二人の実家……?」

辺りを見回しながらそう尋ねる。
でも、随分新しそうなお家。昔遊びに行ったことのある二人の実家は、もっと古かったような?


「違うわ。ここは私と央介が二人で暮らしてるアパートよ」

深央ちゃんによると、央介くんが就職したタイミングで、二人で実家を出て、このアパートに一緒に暮らし始めたらしい。会社への距離とかを考えると、それが一番都合が良かったとのこと。
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