あなたのことは絶対に好きになれない!
「なに、その嫌そうな顔? 酔って倒れて動けなくなったクミを、俺が介抱してやったんだけど?」

「そ、それは……!」


それは確かに、感謝すべきことだとおもう……。
酔った原因はオウスケくんとは言え、放置されずにこうしてお家に連れてきてもらったんだから……。


「で、でもこの服っ?」

「ああ……」

彼は更に意地悪く笑うと、コップをサイドテーブルに置き……急に私と距離を詰める。


吐息が触れ合いそうなほどに、顔が、近いっ。



「もちろん、俺の服」

「だ、誰が着せてくれたんですか……?」


するとオウスケくんは、クスッと小さく笑って。



「俺に決まってるじゃん」


そう言って、私の顎をクイ、と持ち上げた。


色々想像してしまって、顔が、全身が、ボッと熱を帯びる。

そして、恥ずかしさで泣きそうになる。


見られた? 下着姿も、その下も、全部……?


酔った自分を店先に放置せずに介抱してくれた彼のことを〝本当は優しい人〟って思った。
でも、結局オウスケくんはオウスケくんじゃん!
こんなの、意地悪にしては度が過ぎてるよ!
これなら放置された方がよっぽどマシだった!

酷い!


じわ……と瞳に涙が溢れた。

何も言えず、オウスケくんの手を振り払って、胸板を押し、自分から剥がすことだけで精一杯だった。


その時。



「あれ? 久美香ちゃん起きた?」

開きっぱなしだった戸の隙間から、女性がひょこっと顔を出す。

誰?

戸惑う私をよそに、女性は部屋へと入ってくる。
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