恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
はらはらと、花びら舞う
私がその人に会ったのは、入社してすぐだった。
建築内装資材を扱う会社に大卒で入社して、配属された営業部に彼は居た。


営業について暫くの研修期間を経て、その後は正式に営業部の所属になるだろうという説明を受けながら、人事からまず紹介されたのが藤堂部長だった。
藤堂部長も大概綺麗な男の人だと思ったけれど、東屋さんに会った時にはここの営業は顔で選ばれてるのかと真剣に考えたほどだ。


私の三年先輩で、指導役として紹介されたのだが、なんというか麗しい、派手な外見を持った男だなと第一印象はそれ。


「東屋です。よろしく」


人好きしそうな笑顔と、高い背と広い肩、整った顔立ち。
あ、これモテるやつだなとすぐにわかった。


「一花紗世です。よろしくお願いします」

「……ひとはな?」

「はい。一と花でひとはな。珍しいし呼びづらいので適当に呼んでください」


本音だった。
この名字のせいで、銀行や病院、公共施設で呼ばれる時も新しい場所で自己紹介する時も、いつだって大抵二度見されたり聞き返されたり、正直面倒くさい。


「変わってんなあ。なんて呼ばれたりした?」


そう尋ねてきたのは、東屋さんの隣のデスクの人だった。


「あ、俺、糸井。よろしく」

「よろしくお願いします。大学の時は、あだ名で『ひとちゃん』とか『いちか』とか。そう呼ばれると、ほんとにそれが私の名前だと勘違いする人もいるんですけど」

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