恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】


それならそうと言ってくれれば筋肉くらい触ってあげたのに!
確かにベタベタくっつかれたけど田倉さんに比べれば全然可愛いものだし!


あの時には既に、大工さんたちと東屋さんはある程度の信頼関係はある様子だった。
もう全部、終わった後だったのかもしれない。


どくん、どくんと心臓が忙しなく脈うって、胸が熱くなる。


あああ……どうしよう。
抑えきれないくらいにかっこいい。


「頼もしくなったなあって思って、なんか私も嬉しい。……どしたの? 一花さん」



赤くなった顔を隠し、しゃがみ込んで悶絶する私を西原さんが不思議そうに見おろしている。
いけないいけない、耐えなくては。



「いえ、ほんとに、尊敬できる先輩だなあって」

「だよね。私もなんか、安心して退職出来るなあって」

「えっ……?」



余りにもさらっと言うから、うっかり聞き流すとこだった。
数秒反応が遅れて、がばっと顔を上げる。



「あれ? 東屋くんから聞いてない?」

「聞いてません!辞めちゃうんですか?!」

「そっか……うん。えと、急遽、結婚することになって。あと三ヶ月くらいで退職するよ」



えへへ、と頬を染めながら西原さんが頭を掻く。
そんな仕草も表情も、すごく可愛らしくて幸せそうで、この話が本当なのだと裏付けた。


そうか。
だから、私にコーヒーの淹れ方とか教えようとしてたのか。



「お、おめでとうございます!」

「ありがとう」



もっと、何も気になることがなければ手放しで祝福したい。
だけど、頭を掠めるのはやっぱり東屋さんのことで。



「東屋さん、いつから知ってるんですか」

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