恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
「紗世、すきだよ」
誰に抱かれているのかを記憶に焼き付かせるかのように、目を合わせながら彼女の中に沈む。
目を細め、唇を戦慄かせて受け入れてくれる彼女をこのままずっと腕の中に閉じ込めてしまえたらと馬鹿な考えが頭をよぎる。
こんなにも、のめり込むことになるとは思わなかった。
柄にもなく甘い言葉を吐いて、独占欲を剥き出しにして。
抑制が効かなくなっている。
その分、わかってもいた。
『さよさんが結婚退職をする』
そのタイミングで彼女に手を出してしまったということが、後々しこりを残すかもしれないということも。
だから、思い付く限り大事にしているつもりだった。
これまでの付き合いではまずなかったほど、何度も気持ちを言葉にして、それで安心していた。
紗世はいつも笑っていたから
彼女が埋めてしまった小さな不安に、この時はまだ気づいてやれなかった。