恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
言いたい。
でもぺら口封印。
その狭間でグラグラ揺れてた時だった。
座敷の反対隅の方から、あはは、と一際大きな笑い声が上がり目が釣られる。
西原さんと柳原さんが、何やら盛り上がっているようだった。
「楽しそうですね」
「さよさん、飲みすぎ。さっきからめっちゃピッチ早えし」
「そうなんですか」
そういや、飲み会そのもの久しぶりだから楽しみにしてたって、西原さん言ってた。
ってか、やっぱりさよさんを見てるんだなあと、それくらい気になるなら傍に行って止めればいいのに、とか思ってしまうけど。
多分、それは余計なぺら口、だ。
でも心配だし、だったら私が「あんまり飲み過ぎたら太りますよー」とか冗談ぽく言ってみようか、とか考えていたのだけれど、東屋さんの次の言葉でそんな考えは消えてしまう。
「まあ、俺が見てなくてもちゃんと見てる人がいるから」
「見てる人?」
「ほら。藤堂部長が行った」
その言葉通り、藤堂部長が西原さんの傍に近寄って行った。
意味を悟るのが遅れて、暫くは黙ったまま東屋さんの横顔と藤堂部長とを交互に見ていた。
藤堂部長。
初出勤日、藤堂部長と東屋さん二人ともに「綺麗な男」とメモしたことを覚えている。
部長は西原さんの横に座り何かを言って、彼女のグラスを取り上げる。
東屋さんは、感情の見えない横顔でそれをちらりと見て、ビールを一口含んだ。
そこまで見て、やっと気づいた。
西原さんにこの社内でちゃんと付き合っている人がいるのだということ。
しかも、相手が。
「あの、二人?」
「去年から付き合ってるよ。俺は押して押して押し捲った上で振られた方」
さぁ……、っと血の気が下がっていくのがわかった。