社内公認カップルの裏事情 〜ヲタクの恋は攻略不可能?〜
どうして、よりにもよって好きになるのが真樹だったんだろう。
そもそも、いつだって優先順位の一番にゲームが置かれる程の生粋のオタクになってしまった私に好きな人がまた出来るなんて思ってもみなかった。
「リアルの恋愛はもうしないって思ってたのになぁ……」
リアルの恋愛をするとしても、好きになる相手が清水なら、私は幸せになれたかもしれないのに。
どうしてよりによって、ゲームしか頭にない真樹なのか。
「美帆」
「わっ⁉︎ ま、真樹……!」
突然、肩に手が置かれて体がビクッと反応した。反射的に振り返ると、そこには何やら不適な笑みを浮かべる真樹がいた。
この真樹の笑みに何だか嫌な予感を感じていると、その勘は当たってしまい、真樹は口元を私の耳に寄せた。
吐息が耳にかかる程近い距離にある彼の唇に、きゅっと肩をすくめる。すると。
「こんなに完璧な彼氏がいながら、勝手にリアルの恋愛始めちゃったんだ?」
帰ったら詳しく聞こうかな、と言って口角を上げる真樹の目が笑っていない。
「あ、違っ、真樹……」
「許して欲しければ、今日は必ず定時で真っ直ぐ帰ってくるように」
「だから、真樹、違うってば!」
はやくも背中を向けて歩き出していた彼に向けて声を張るけれど、彼は右手を挙げてそのまま去って行ってしまった。