社内公認カップルの裏事情 〜ヲタクの恋は攻略不可能?〜
結局真樹の誤解を解くことはできないまま定時を迎えてしまった私は、ため息混じりに会社を出るとその場に足を止めた。
真樹のあの顔を見る限り、私のことを掟破りだと言って叱ってくるに違いない。
「河合?」
帰るのが億劫だな、なんて思っていた私に後ろから声がかかり振り向く。すると、そこには私と同じく帰宅するのであろう清水がいた。
「清水。お疲れ様」
「何そんなところ突っ立ってんの」
「あ、いや、ちょっと」
ぼうっとしてた、と付け足して笑ってみせると、となりの清水も「なんだそれ」と言って笑った。
「ひょっとして深川待ってた? もう帰ったみたいだけど」
「ううん、違うよ。本当にぼうっとしてただけ」
「そう? それなら良いけど……」
何となく歯切れが悪く、まだ何か言いたげに見える彼の次の言葉を待つ。すると、彼は「今日、この後予定ある? たまには前みたいに一緒に飲みたいんだけど」と少しだけ言いづらそうに言った。
「あ……ごめん。今日はちょっと早く帰らないといけなくて」
つい、このまま清水と飲みにいけば真樹の説教を受けなくて済むかもしれない。と、投げそうになってしまったけれど、そんなことをすればもっと酷い未来がやってくるに違いない。