だからそれは、愛じゃない。




 『佐野さんは優しいなー! 俺まで好きになっちゃうかもー! まーでも、俺はストーカーになんてならないから安心してー!』

と、明らかに憎しみが籠っているヤジを、祐樹に飛ばす田中くん。


 田中くんは一体何を勘違いしてるの??


 祐樹の事をストーカー、ストーカーってさっきからバカにして。


 祐樹がそんな事するハズないじゃん………
 イジメの理由が度を過ぎている。



 自分の机に顔を伏せてる祐樹の肩をポンポンと、叩いた。



 すると祐樹がゆっくり顔を上げてくれた。


 私だと分かった祐樹はゆっくり両耳からイヤホンを外した。


「あの、これ………ノート………」


 そう言い、祐樹にノートを差し出すと、『………ああ。ありがと』と、苦しそうな笑顔を私に向けた。



 久しぶりすぎて会話が続かない。
 ……会話を、続けれない。



 話せたことがこんなに嬉しくて、どうしようもなく嬉しくて、涙が込み上げてきてしまい、私は逃げるように祐樹から離れてしまった。


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