【中編】彼女様は甘い味。
「…本当っ、ビックリしたよねぇー?」
ピンクのホワホワしたハート型のクッションをこれでもかってくらいに抱きしめながら、やや興奮気味で恵ちゃんは言う。
それよりも何故か、あたしの部屋に結衣ちゃんも恵ちゃんも居るのですが…
あたしは今直ぐにでも寝てしまいたいというのにも関わらず、
お二人はまったくと言っていいほどに眠くなんてなさそうなので困ります。
「そうね、確かに…」
「ビックリって、何をそんなに驚かれたんですか…?」
眠気のせいなのか、何でなのかは不明だが。
二人の話している内容がちゃんと理解出来ていなかったんだろう。…か。
「何をって…、アンタ聞いてなかったのー?」
するとそのクッションをあたしの頭にバランス良く乗せて恵ちゃんは不敵に笑う。
「…あ、はい」
『聞いていなかった』わけではない。
ただその話が頭に行き届く前に消えてしまった。というのが奏音的には正しい。
だけどこの場は『聞いていなかった』ということにしておこう。
そんな考えの奏音、
「大杉が奏音のこと連れ出した後、本当タイミング良くDevilメンバーが来てさっ!!」
やっぱり興奮気味の恵ちゃんに、少しばかり圧倒される。
…でも大体、
あの日のことですね、なんて分かってきてしまったけど。
ここは黙って最後まで聞いておくべきですよね。
「そうなんですか…」
これも何となくだけれども、相槌を打ってみたりしてみたりして…、?
隣ではあまり興味がないのか何なのか本を読みつつあたし達をたまにチラッと見る結衣ちゃん。