【中編】彼女様は甘い味。




選んだのはお前…ですか?


案の定、奏音は目を真ん丸くして口をあんぐりと開けっぱなし。


それはそうだ。



大体いつも蓮二の言う言葉は分かりにくく理解しがたい。

なにしろ国語的要素の“主語”というごく一般的なものが身に付いていないのだから。




「傍に…傍にいるって言ったのはお前じゃねぇのかよっ!?」



先輩のその言葉で…



あたしはあの日、自分が投げ掛けられた先輩からの質問に対しての答えを思い出しました。





けど、けど…



「…けど、あたし…」


弱気、



奏音は昔からそうだ。


普通の人にとってはどうってことないことも、
気になり出すと気になって気になって…仕方がないのだ。



世間的な表現で言えば“ネガティブ”

でも実際の彼女はそんな表現ではなく“ポジティブ”なのかもしれないが、




「…聞いとけ」


急に先輩はそう言うと、

あたしの目を片方の手で優しく覆うようにして隠してしまいました。



「っ?!…あの、」


「簡単に忘れろとか言うな」


どう…なされたのですか?


「被害妄想ばっかすんな」


「…先、輩?」

そうあたしが口にしても蓮先輩の大きな手の平はあたしの目元からどく気配はありません。



戸惑う気持ちが抑えられないのか、
奏音の口元が薄くだけ開く。


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