【中編】彼女様は甘い味。
あれ…?
でもどうしてあたしをここまで連れて来たのかという質問には答えていないのでは?
「…どうして食堂に来てたんですか?
しかもあたしの所に…」
「あー、たまたまお前がいるの見えたから…」
じゃぁ…
さっきのはまったく関係の無かった話だったわけですか…?
「…そうだったんですかぁっ」
しかし関係のない話だったことも、
さっき『てめぇ』とか『馬鹿』とか言われた事も忘れて単純な奏音は、
自分を見つけて話し掛けようとしてくれたことに嬉しくて笑顔になる。
「…ばっ!?
お、お前…、勘違いすんじゃねーぞ!?」
少し赤くなって蓮二は言うと、
自分の使ったタオルを奏音の頭に投げつける。
そんな姿に思わずクスッと笑ってしまう。
「…お前さぁ、この後もサボるっしょ?」
「えっ…?」
「サボるなら行くぞ、屋上」
まだサボるとも言ってなければ、
縦に頷いたわけでもないのに、ズルズルと引きずられるままに連行される奏音。
…え、?
え、え、…?
あたしそんなことまだ言ってないのに、…この人はどうしてこう…
困ったような表情をしつつも、
されるがままなのは普段からこういうことに慣れているからなのかもしれない。
「…先輩は、いいんですか…?」
授業でないと怒られちゃうんじゃないか…、な?
「いいって何が?」
「授業…、です」
「…あんなの受けなくていいんだよ、かったりー」
あ、…そうですか。
それ以上は聞かないことに、しときましょう。