【中編】彼女様は甘い味。
「先輩、鍵閉まってますよ…?」
「あったり前だろ、アホ」
…何か話しかける度に、
確実に1回は嫌な言葉を浴びせられている奏音。
『あったり前だろ』って…
ならどうするつもりなんですか?
そう思いながら姫山先輩をボーッと眺める。
「俺様を誰だと思ってんだ、お前は…」
おもむろに制服のポケットへ手を突っ込むと、
たくさんの鍵が付いたようなものを取り出した。
…まさか、と思えば、
そのまさか。
「先輩っ!
…鍵、どうして持ってるんですか?」
目を真ん丸にさせてそう言うと、ワクワクしたような表情をする。
「俺だから、持ってんの」
…答えになってない、です。
─ガチャッ…
「ホラ、…入れよ」
そう言ってあたしに笑顔向けると、優しく手を差し出す先輩。
…思わずドキッとしてしまう。
「あ、…ありがとうございます」
初めて来た屋上は思ってたよりも大きくて広くて、
「…こっち来てみ」
そう声が聞こえて振り向くと、
「あ、危ないですっ!」
更に梯子を登った所に寝そべっている先輩。
「怖くねぇーから、ホラ、来いよっ」
「…はい…っ」
怖いから嫌だと思いつつも渋々登っていく奏音。
「わぁ…っ」