【中編】彼女様は甘い味。
「凄いだろ、この景色…」
町全体が見渡せて、まるで太陽が掴めそうな…
そんな場所。
「…風が気持ち良いですね」
ゆっくりと目を閉じると、とても心地好い。
「だろ…?
よく一人で来るんだ、俺」
空を見上げながら先輩はグーンと伸びをすると、
そのまま再び寝っ転がる。
…何だかいつもと雰囲気が違うのは、
いつもはワックスで無造作にされてる髪が真っ直ぐなせい?
今日の先輩は、どこか変です。
「…なぁ、」
そんなことを思っていると、チラッと奏音のこと見て蓮二は言う。
「俺が…、怖いか?」
「…へ、?」
「…お前さっき、泣いてたから…っ」
あぁ、…きっと。
きっと先輩なりに気にしてくれてたんですね。
「怖く…、ないです
…いつもは怖いけど、」
先輩の顔色を窺いながらあたしはそう言った。
「あっそ…」
クスッと笑いながらまた再び空を見る先輩。
そんな先輩を見て、
どうしてか心がざわついてきてしまって…
「…あ、先輩!
どうぞ!これ貰って下さい」
すると急に何かを思い出したのか、
大きめサイズのカーディガンのポケットからあるものを出した。
「…何?」
「ウーたんのシリーズのバットくんです!」
ニコニコ笑いながら言う奏音と対照的に、
ドン引きともいえる表情の蓮二。
「…は?だから、何コレ」
まだよく分かっていない様子の蓮二。
「昨日、部屋に帰ってウーたんシリーズを整理してたらあったんです!」
…この子も答えになってない。