二人だけの秘密
「………」

親の悪口を聞いて、美希さんの表情がさらに雲った。それに、僕は気づかない。

「毎日毎日僕のことを怒って、あんな奴ら死んだ方が………」

「ごめん、未来さん。私、仕事に行かないと」

突然、美希さんが僕から逃げるように走り去った。歩道に積もった雪道にくっきりと靴の足跡を残しながら、僕の視界から姿を消していく。


ーーーーーー『私の母親、病気がちで働くの難しいの』


その瞬間、美希さんが風俗で働いている事情を思い出した。

「ち、違うんだ。美希さん」

慌てて彼女を追おうとしたが、突然、雪吹雪が空中に舞った。

「ウッ」

視界が白一色になり、僕は一瞬その場から動けなかった。

「美希さん………」

雪吹雪は一瞬で治まったが、僕の視界に美希さんの姿はなかった。
< 157 / 206 >

この作品をシェア

pagetop