二人だけの秘密
第一章 ひとめぼれ



『4月9日《水》午前6時50分』




「未来、今日から高校生活スタートするんでしょ。早く、起きなさい」

母親が木目の螺旋階段を上がり、僕の寝室の扉をガチャリと開けた。

「おはよ、朝よ」

母親が淡々と言い、僕の窓辺のカーテンを勢いよく開ける。

「ウッ」

太陽の幾筋の光がまぶしく目に当たり、僕は手で顔を覆った。

「………」

もう少し寝ようと思ったその時、

「今日から、高校生活スタートするんでしょ。勉強・友情・恋愛・いつまでも寝てないで、楽しい高校生活が始まるわよ」

母親が、朝から僕に嫌がらせを言う。

かけ布団を放り投げ、僕の体を二回大きく揺らす。そして、さっそうと下に駆け下りた。

「辛い………」

僕はまだ半分眠っている目をこすりながら、シングルベットからゆっくりと起き上がった。

開けっ放しの寝室のドアを抜け、短い廊下を一歩一歩亀のようにのろのろと歩く。そして白い壁に手をつきながら、ふらついた足取りで木目の螺旋階段をゆっくりと下りた。


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