二人だけの秘密
心臓が波打つ。美希さんといるときは、いつもこうなる。心臓の鼓動が普段より、激しくなる。

「ははは。やっぱり、そうですよね。私のお仕事知ったら、驚きますよね」

美希さんは、悲しそうに微笑む。美希さんの口調は明るかったが、表情は悲しそうだった。

「………」

その美希さんの表情を見た僕は、自分の軽はずみな発言に申し訳ないと思った。

「でも、栗原さん。大丈夫なんですか?謹慎中、外に出かけても………」

美希さんは細くて白い首を傾げて、心配そうな顔で僕に訊いた。

「ま、二週間経てば、学校に戻って来れると思いますよ。反省文は、書いてませんが………」

「えっ!反省文書かないと、謹慎は解けませんよ」

「え、そうなんですか?」

美希さんの発言を聞いて、僕は目を丸くして驚いた。

「そうですよ」

美希さんはクスクスと笑いながら、淡々と言う。

「………」

僕は頭の中で、学校で渡された反省文を思い出した。

ーーーーーーどうやら反省文を書かないと、学校には戻れないらしい。書かないと、美希さんとも学校では会えない。

「それは、嫌だな………」

僕は、ボソリと呟く。

「でも、よかったです。栗原さんが、退学にならなくて。栗原さんがハサミを投げてケガを負わせた被害者の男性も軽傷で済み、来週ぐらいから学校に来る予定らしいです」

ーーーーーーどうやら、そうらしい。

「………」

誰にでも優しく出来る、美希さん。僕にはない優しい心を持っている美希さんに、恋愛感情が膨れ上がる。それと同時に、僕のいない今の学校生活も楽しんでいると思うと、嫉妬心が込み上がる。

ーーーーーー早く、学校で美希さんと会いたい………

親の言いつけに背くように、美希さんへの一方的な愛が膨れ上がる。
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