幼なじみじゃ、なくなった夜。
「…榎波っ!」
「…夏帆?」
翌日。
仕事を定時で切り上げた私は、榎波から借りた傘を持って、エントランスで彼が仕事を終わって出てくるのを待ち伏せしていた。
何人かの同僚と談笑しながら歩いてきた榎波が、私を見てギョッとした顔をする。
だけど周りの同僚たちに軽く会釈をして、「…どうした?」とすぐに近付いてきてくれた。
何だ何だ、と、私に向かって歩いてくる榎波の背後で、同僚たちから好奇の視線が注がれているのが分かる。
…あー、こりゃぁまた噂がたつなぁ、なんて思いながらも。
どうしても、榎波に伝えたいことがあった。