幼なじみじゃ、なくなった夜。
ガバッと勢いよく頭を下げた私の上で、一体榎波は何を思ったのか。
暫しの沈黙の後
「……あぁ〜っ!」
突如叫びだした榎波。
驚いて顔を上げると、そこには私に背を向け、右手で顔を覆う榎波がいた。
「…焦った」
「…え?」
「てっきり振られると思ったから…」
…どうやら榎波はホッとしているらしい。
クルリと私に向き直った榎波は、私の手から傘とカバンを奪い取ると偉そうに言った。
「帰んぞ、送ってってやる」
「え?い、いいよ!いつも一人で帰ってるし」
「…お前なぁ」
慌てて引き止める私に、呆れたような視線を向ける榎波。
「気付けよな」
「は?」
「好きな女とは少しでも一緒にいたいに決まってんだろ、バーカ」