極甘求婚~クールな社長に愛されすぎて~
…と言われても普段の業務の合間を縫って調べ物をするのはかなり大変だ。
桧山さんが手伝うと言ってくれたけど、私よりもお客様を多く抱えている先輩に、深夜に渡るまで付き合わせるにはいかないし。
「楓ちゃん、大丈夫?目の下のクマ、すごいわよ?」
連日濃くなっていくクマを遠藤さんに指摘されてしまった。
「コンシーラー貸そうか?」
「いえ」
今日は特にお客様に会う予定はない。
それに今はクマを隠すためのメイクをする時間も惜しい。
「それよりも濃いブラックコーヒーの方がいいです」
ワガママかと思ったけど、私の鬼気迫る様子を察してくれた遠藤さんは文句ひとつ言わずに通常の倍の濃さのコーヒーとクッキーをくれた。
「クッキーまで。ありがとうございます」
空腹にブラックコーヒーは胃に悪いだろうと配慮してくれた遠藤さんの優しさが束の間の癒しを与えてくれる。
手を止め、クッキーを頬張れば疲れた脳と体が生き返る気がした。
そのおかげ…と言うのは言い過ぎだけど、そこから一気に集中して他の業務を終わらせることができたことで、空いた時間の全てを紬の会社の問題に当てることが出来、一週間ほどで裏付けは取れた。
と同時に所長も情報を手に入れて来てくれた。
「勝俣くん、ちょっといいか」
出社早々、所長に呼び出された。
いつになく硬い表情にこれから話される内容の重大性を感じさせる。
口元を引き締め、所長室の扉を閉め、所長の元へと歩を進めた。
「忙しい中、悪いな。だが、早く伝えた方がいいと思って」
スーツを脱ぎながら話す所長から上着を受け取り、ハンガーに掛ける。
「ありがとう。いや、それより座ってくれ。昨日、懇意にしてる銀行とのゴルフコンペでナカツガワの会社に関する情報が得られたんだ」
紬の会社名に分かっていながらもドキッとする。
でも動揺を見せないようにしてソファーに腰掛ければ、所長も目の前に腰掛け、まず前任の税理士の解雇理由について触れた。
「前任の税理士だがな、彼はあろうことかミスを犯していた」