リト・ノート
「他には?」

「テストが好きなの、とか」

「ほんと怖いな、なんか」

テスト。その言葉にまつわる怖さを羽鳥なら理解できるのかもしれない。ふと、美雨はそう感じた。



「ちょっと、しゃべるの聞いてみる?」

「いいよ」

羽鳥は気軽に美雨のうちに来ることを承諾した。
ほんの気まぐれに、ほんの偶然に流されて。




ずっとずっと後になって何度も考えた。

なんであのとき羽鳥を誘ったのか、普段男子とほとんど話をしない自分なのに。そして羽鳥はなんで「いいよ」と言ったのか、そんなに興味もなかっただろうに。

ただふと思いついて、気付いた時には声を掛けていた。羽鳥も一瞬もためらわなかった。

きっと、あの瞬間、知らないうちに私達は自分で『呼んだ』のだろう。

美雨はやがてそう結論づけた。リトに言わせればきっと、そういうことなんだ。


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