リト・ノート
しかし家に着くと、羽鳥はポケットに手をつっこみ壁に寄りかかりながら玄関前で美雨を待っていた。

外から少し見えにくい位置にある玄関に人がいることに気づかなかった美雨は一瞬びくっと飛び上がり、羽鳥に声を立てて笑われた。

「また町村?」

「ううん、山根くんに荷物運び手伝わされて」

運動会で係が一緒だったよしみでとこじつけられて、日直仕事を手伝わされたのだ。

遅くなってごめんねと喉まで出かけて、いや約束してないし、と思いとどまった。連絡しなくてごめんとか、羽鳥からそういう言い訳は一切ない。

来るのが当然なの? 私に何か用事があるって可能性はないの? と美雨は何か釈然としないまま部屋に案内することになった。

「山根に、なんか言われた?」

羽鳥が呟いたそれは、さりげないようでいて何か含みのありそうな質問だ。

「そういえば山根くんにもちょっと言われたし、他の子にも羽鳥と仲良いねって言われた。リトのこととかしゃべってないよね?」

人に話したりしないと思っていたけれど、羽鳥に口止めしたことも別になかったと気づいて聞く。

「別に、誰にも言ってない。言えないだろ」

当たり前みたいに返されて、そうだよね言えないよねおかしいもんね、と美雨はホッとした。でもこうやって2人で秘密を共有してるみたいになってるから変なのだろう。
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