ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
『私は謙信くんのことが好きだから。……だから謙信くんと結婚したいし、謙信くんの赤ちゃんがほしい』

衝撃だった。まさかすみれが昔から好きでいてくれていたとは、夢にも思わなかった。

人と付き合うのが苦手な彼女は、好きな相手もいないと思っていたから。

俺のことは幼なじみのお兄ちゃんとしか思われていないだろうと。そう疑わずにいたから。

でももっと驚いたのは自分の気持ちだった。

いつからだろうか、気持ちのコントロールができなくなっていったのは。

結婚する以上、すみれとは普通の夫婦と同じ関係性でいたいと思った。これまでだって何度も経験してきたし、すみれとだってできる。

そう思っていたのに、なぜか手を出すことに躊躇し、みるみるうちに変わっていく彼女に焦りを覚えた。


口では俺以外にも、頼れるような本音で話せるような同性の友達を作ってほしいと言いながら、実際にできるとすみれは嬉しそうに彼女の話ばかりしてきた。

昔のすみれを知っているからこそ、俺も自分のことのように喜んで話を聞いていたものの、日が経つごとに苛立ちを覚えていった。
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